何から始める?遺産相続の流れ
親族が亡くなるのは大きな悲しみですが、自分が相続人という立場であれば、遺産相続という現実的な問題に直面することになります。相続人とは相続財産(遺産)を相続する人、被相続人とは相続財産を残す人(故人)のことです。ここでは遺産相続手続きのためには何からどのように始めれば良いのか、その流れを解説します。
被相続人の預金や保険などの契約状況の確認
まずやるべきなのは、被相続人が被相続人名義で契約していた銀行、保険会社、証券会社などの契約状況を確認することです。そしてそれぞれの企業に連絡を取り、契約者の死亡を連絡しなければいけません。この手続きを行うことにより、各企業から相続に必要な書類の案内などを受けることができます。
ただし、注意しなければいけないことがあります。例えば銀行の場合、被相続人の預金口座は口座名義人の死亡が確認されるとその時点で凍結されてしまいます。つまり、故人が死亡したことを連絡すると、その時点で口座が使えなくなるということです。
そのため葬儀の費用などが必要な場合は、事前に家族がその分のお金を引き出しておくことをおすすめします。死亡前後に引き出したお金は相続財産の一部とみなされ後に相続税の対象となりますが、葬儀代は課税対象外です。
ちなみに、死亡届は、死亡から7日以内に本籍地または死亡地または届出人の住所地の市区町村役場に提出することになっています。この死亡届を出しても、すぐに役所から金融機関に連絡が行くわけではありません。
相続人の把握・遺言書の有無の確認
次に法定相続人の確定を行います。誰が相続人なのかをしっかりと確定させておかないと、このあとに作成する遺産分割協議書の有効性に問題が出ます。確定に必要なのは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、あるいは除籍謄本、改製原戸籍です。
これと合わせて、遺言書の有無も調べます。遺言書があればそれに基づいてその後の手続を行うことになるので、被相続人がどこかに保管していないか、親族や知人の誰かが預かっていないかを必ず確認します。公証人に作成してもらう公正証書遺言については、公証役場で有無を調べることができます。
相続財産の把握
相続財産の把握も必要です。相続財産にはプラスの財産とマイナスの財産、みなし財産があります。
プラスの財産には不動産、現金、有価証券類、動産(車・美術品・貴金属など)といった資産があります。これに対しマイナスの財産とは負債、主に借金のことです。みなし財産は死亡保険金など、死亡によって発生する財産のことです。
プラスの財産が多かった場合、マイナスの財産が多かった場合、いずれの場合でも相続人が相続したくなければ、相続放棄をする権利があります。
通常の流れとしては、財産目録を作成して相続財産の内容を確かめ、相続を承認するか放棄するかという意思を決めます。そして相続すると決めた場合は財産目録を遺産分割協議に利用する資料とします。
もうひとつ、税務署に申告すべき所得がある人が年の中途で死亡した場合は、本来行うべきだった確定申告の代わりとなる「準確定申告」を行います。この準確定申告の期日は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」となります。
遺産を分ける
遺言書があればそれに従って遺産を分けます。遺言書がない場合は、相続を承認した相続人が集まって遺産分割協議を行います。この協議は誰がどの遺産をいくら相続するかという分割方法と内容を決めるものです。協議がまとまれば、合意内容を記載した遺産分割協議書を作成します。
相続手続き
最後に、各相続財産の名義変更や登記手続きを行います。銀行口座であれば遺産分割協議書と被相続人、相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書、相続人全員の印鑑証明書などを用意して銀行窓口へ行き、預金相続の手続きを行うことになります。
遺産相続の流れはざっと以上のようになります。相続人が多いなど事情によって手続きの内容が煩雑になると考えられるときは、遺産相続手続きの代行を請け負っている事務所などを利用するのも良いでしょう。いずれにしろ、遺産相続はしっかりと計画的に行う必要があります。