高齢化社会で注目を浴びている孤独死対策
高齢化社会が進行にするにつれ、都市部を中心に問題になっているのが高齢者の孤独死です。マスコミなどで取り上げられているのを見かける以外にも、身近な問題として直面したことがあるという人もいるのではないでしょうか。孤独死対策はどのようにして行っていくべきなのか、現状や背景について探りながら考察します。
孤独死問題への注目
都市部では、自宅は最も多い高齢者の死亡場所です。東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における「65歳以上の一人暮らしの者の死亡場所」が「自宅」だった件数は3,127件です(平成27年度)。2位の「病院」は787人なので、自宅で死亡している人がどれだけ多いのかがわかります。10年以上前の平成15年には1,451人だったのに比べると倍以上に増えており、今もその数は年々増加傾向にあります。
また、独立行政法人都市再生機構では、同機構が運営管理する賃貸住宅約75万戸で、団地内で発生した死亡事故のうち、単身の居住者が誰にも看取られることなく死亡し、死亡から相当期間(1週間を超えて)を経て発見された件数(自殺や他殺などを除く)を公表しています。平成26年度のデータでこの条件に該当するのは186件あり、うち140件が65歳でした。
東京などの都市部では、一人暮らしの高齢者が孤独に死んでいくケースが増えているのが現状です。今後、こうした孤独死問題をどのようにして防いでいくのかは、日本の社会全体が抱える大きな課題となっています。
孤独死が増える背景
孤独死はなぜ増えているのか、さまざまな理由が考えられますが、中でも次の2つの背景を意識することが事態の改善につながると考えられます。
別居している子どもとの接触頻度が低い
高齢者の中には子どもがいない人もいますが、いるにもかかわらず一人で暮らしているというケースも多く見受けられます。その理由は、子どもは就職や結婚を機に出ていき、配偶者が亡くなった後もそのまま同じ場所に住んでいたり、アパートなどに引っ越して一人暮らしになる高齢者が多いためです。子どもには子どもの生活があるため同居すると迷惑がかかると考えている高齢者や、誰かに干渉されることなく自由に暮らしたいという高齢者は少なくありません。また、地方では子どもが都市に出ていって高齢者だけがその地域に残ることがよくありますが、都市周辺部でも子どもだけが都市中心部に移り住むという現象が見られます。このような状況で親子は互いにあまり干渉しなくなり、互いの接触や交流が希薄になっていってしまうようです。
地域とのコミュニケーションが薄い
周囲に住む人の高齢者に対する関心度も低くなっています。都市部のアパートやマンションでは隣にどんな人が住んでいるかを知らない、知ろうとしない人が少なくありません。近所付き合いの機会も減っています。以前は加入することが当たり前だった町内会などの自治会も参加を拒む人が増えています。地域でのコミュニケーションが希薄になっていく中で、誰かの姿を見かけなくなっても気遣って様子を見に来る人がいないといった状況が常態化しています。
孤独死の対策方法
こうした状況を打破するには、地域コミュニティを活性化し、近所への声かけなどを習慣として行うような雰囲気を作っていくしかありません。また、マンションの管理組合や管理会社が対策を立てることも重要です。現状の問題点の洗い出しを行い、普段の見回りの励行や、緊急時の対応マニュアルの作成などを進めていく必要があります。
業者による見回りサービスの導入なども有効です。最近では一人暮らしをする高齢者向けの救急通報システムや、離れて暮らす家族に状況を知らせるシステムを比較的低価格で提供する企業が増えています。また、親子間でスマホやタブレットを積極的に活用して連絡を取り合うといった方法もあります。毎日電話をするのは大変でも、ちょっとしたメッセージなどを送り合うようにすれば、異変にも気づくようになるはずです。
今後、高齢化社会が進み、子どもを持たない若者が増えていけば、孤独死の問題はますます深刻なものになっていくでしょう。一人ひとりが孤独死について真剣に考える時代になっていることを自覚することが大切です。