霊園とは違う寺院墓地の檀家制度とは
寺院墓地と関係の深い「檀家」や「檀家制度」、あるいは「菩提寺」という言葉の意味をご存知でしょうか。寺院墓地をすでに利用している人はもちろん、これからお寺にお墓を建てようとしている人にとっても役立つ、檀家制度についての基礎知識を紹介します。
寺院墓地を利用する際の「檀家」とは
檀家とは家単位で特定の寺院に所属し、葬儀や供養をそのお寺に任せて、代わりにお布施などによって経済支援を行う家のことを言います。檀家という言葉はサンスクリット語(梵語)の「ダーナパティ」から来ており、寺院や僧侶を援助する庇護者を意味します。
檀家という言葉は鎌倉時代から存在し、室町時代末期には寺院と檀家の関係が自然に発生したと言われています。その後、江戸時代にはキリシタン禁制や民衆の戸籍台帳(当時は宗旨人別帳)作りを目的として、本格的に檀家制度(当時は寺請制度)が整備されていきました。
これ以降、檀家になると、入檀料や法要の際のお布施などによってお寺に経済支援を行うことが一般化していきます。これをもとにお寺はお墓の管理や供養を執り行うのです。
檀家により守り継がれ、先祖代々のお墓があり、位牌をおまつりしているお寺のことは菩提寺と呼びます。たとえば本堂などの施設を新築・改築するときには、檀家はしばしば菩提寺への寄付を求められます。これはつまり、菩提寺は多くの檀家が共同で支援するという考え方がベースになっています。
檀家制度の現在
しかし、こうした檀家制度は、現代では昔ほど厳密なものではなってきています。今では檀家にならなくても、読経などの供養をしてもらうことは可能です。宗教観の変化、地方の過疎化、家単位という考え方と現代的な価値観とのズレ、お墓の継承問題などが重なって、一般の檀家制度に対する意識も薄くなり、檀家離れが進んでいると言われています。
檀家のメリット
それでも檀家になる意義がなくなったわけではありません。檀家になるとどのようなメリットがあるのか、代表的なものを挙げてみましょう。
菩提寺で供養してもらえる安心感を得ることができる
すでに檀家になっている人(家)にとっては、故人や先祖のことを知り、長く付き合いのある菩提寺に手厚く供養してもらえることには大きな意味があります。これから檀家になる場合も、そのような菩提寺のもとにお墓を建て、これから関係を築いていくことに意義を見出す人は少なくないでしょう。
法要のすべてを寺院で執り行うことができる
法要の際には、読経はもちろん、卒塔婆の用意、会食などもお寺で行うことができます。年回忌などは、通常、お寺から事前に「そろそろ◯回忌です」という連絡をもらえます。
供養のマナーについて相談ができる
供養のマナーやしきたりについて知りたいことがあるときにはお寺に相談をすることができます。法要・法事のやり方など初歩的で、周囲の人には今さら聞きづらいようなことでも、丁寧に教えてもらえるので心強いでしょう。
季節行事がある
宗派によっては、施食会(お施餓鬼)や御会式といった行事があります。檀家同士のコミュニティーに加わることができます。また、その際に僧侶に宗教や生活のことについて相談することもできるでしょう。
寺院墓地における檀家制度は、日本に仏教が根づいていく過程の中で育まれてきた歴史ある制度です。しかし現在ではお寺によって、その実情が昔とは異なっていることがあります。檀家となるときにはお布施をどの程度支払うのかなども含めて、事前によく確認するようにしましょう。